男女共同参画学協会連絡会 Japan Inter-Society Liaison Association Committee for Promoting Equal Participation of Men and Women in Science and Engineering Japan Inter-Society Liaison Association Committee for Promoting Equal Participation of Men and Women in Science and Engineering

「女性研究者支援モデル育成事業」の募集継続と柔軟な運用、および その他の必要な施策等の実現に関する要望

平成19年6月4日 男女共同参画学協会連絡会

平成18〜22年度にわたる第3期科学技術基本計画および男女共同参画基本計画(第2次)では、人材の育成、確保、活躍の促進が最重要な課題として取上げられています。そのためには、何よりも個々の人材が活きる環境の整備が重要であることは論を待ちません。特に女性研究者・技術者の育成と活躍促進のための環境整備は、これまで長期にわたり懸案課題でありました。男女共同参画学協会連絡会では平成17年4月に「第3期科学技術基本計画に関する要望」を提出しましたが、その要望のいくつかについては、平成18年度から文部科学省および日本学術振興会の支援事業として取り上げられました。

たとえば、その一つ、文部科学省・科学技術振興調整費による「女性研究者支援モデル育成事業」については、平成18年度には、応募した36大学のうち10大学が、平成19年度には19大学のうち7大学・3研究機関が採択され、研究と出産・育児等の両立支援のための環境整備のみならず、意識改革をも含めた「モデル事業」がスタートいたしました。また、日本学術振興会の出産・育児から研究現場への復帰支援を目的とする、「日本学術振興会・特別研究員-RPD制度」も平成18年度に創設され、新たなキャリア形成のステップのひとつとして、大いに期待されております。

「女性研究者支援モデル育成事業」は、我が国の女性研究者の歴史始まって以来の画期的施策であります。実際、モデル事業の現場では女性研究者の表情が明るくなる、学内の出生率に上昇傾向がみられる大学も現れる等、今後の成果がおおいに期待されるところであります。将来にわたって、この事業が定着し、女性研究者・技術者育成の基盤がさらに整備されていくことを願ってやみません。しかしながら、人材育成も意識改革も、その試みが定着するには十分な時間が必要なことは明らかです。支援事業が全国の諸大学・研究機関に波及、浸透するためには、モデル事業に関する全国ネットワークの拡大が望まれます。これまでの大規模総合国立大学、特色ある私立大学、そして、伝統ある女子大学等の先導的試みに加えて、平成20年度以降は、初年度、次年度で必ずしも機会を得なかった地方大学等、大規模総合大学ではない大学・研究機関からも、コンソーシアム形式の「女性研究者支援モデル育成」事業の新たな展開が期待されるところです。(添付資料1および2;参照のこと)

「女性研究者支援モデル育成事業」および「日本学術振興会・特別研究員-RPD制度」の目指すところは、優秀な人材の継続的育成、確保、活躍促進のために、若い世代が、研究の現場において、バランスのとれた柔軟な「キャリア形成とライフサイクルの見通し」を持ち得ることと考えられます。研究者が男女を問わず、希望すれば家庭を持ち次世代を育んでいける「ワークライフ・バランス」の実現に必要な種々の施策が遂行されてこそ、少子化を食い止め、かつ科学技術の分野に多様で優秀な人材を迎えることができるはずです。

そこで、男女共同参画学協会連絡会では、「女性研究者支援モデル育成事業」、および「日本学術振興会・特別研究員-RPD制度」の将来にわたる募集継続とその柔軟な運用、そして その他の必要な施策等を可及的速やかな実現のために、以下の5項目を要望いたします。

1.文部科学省による「女性研究者支援モデル育成事業」もしくはその発展型プログラムの平成20年度以降の募集継続と、それらの柔軟な運用にかかわる要望

「女性研究者支援モデル育成事業」が、平成20年度以降も継続、もしくはそれを発展させたプログラムとして進められることを要望いたします。また、その運用については新規性を問うばかりでなく、支援モデル事業を進めている現場の実情に対応して、効果や効率性の向上の観点から、可能な限り柔軟な運用が行われることを要望いたします。
(添付資料1、参照のこと)

2.女性研究者・技術者の採用と昇格に対する数値目標の設定と特別交付金制度の設置に係る要望

各大学・研究機関が女性研究者・技術者の基本的人権を尊重した雇用・育成を促進するために、採用、昇格に関する短期、中期、長期的な数値目標を設定し、その評価基準と進捗状況を定期的に調査、公開できるよう、内閣府・文部科学省・各大学・研究機関が、相互に緊密に連携して進められることを要望いたします。また、この数値目標の達成度が、国立大学法人の中期目標(中期計画や年度計画も含む。)における評価項目として追加されること、その上で総合的評価の上、運営費交付金等に反映させることなどを検討されるよう要望いたします。(各組織に関する数値目標の設定とそれに基づくインセンティブの付与には、法律的な問題、大学等の自治など難しい問題があると思いますが、女性研究者の割合が 11.9 % と国際的に最低レベルであるという現状を改善するには何らかの有効な手だてが求められます)

3.全国すべての大学・研究機関における、男女共同参画室の設置と男女共同参画コーディネーターの配置に係る要望

各大学・研究機関における男女共同参画を全国規模で推進するために、現在「女性研究者支 援モデル育成事業」に係っている大学・研究機関を核として、将来的には、全国のすべての 大学・研究機関に男女共同参画室を設け、男女共同参画推進やセクシュアル・ハラスメント 防止等の専門知識を有する専任の男女共同参画コーディネーターを配置されるよう制度整備 を要望いたします。
(添付資料1;振興調整費効果参照の項、参照のこと)

4.子育て中の研究者の現状に見合った育児支援にかかわる具体的施策の実施とその資金補助に係る要望

1)育児支援資金の創設
昨年度よりスタートした「日本学術振興会・特別研究員RPD制度」のような復帰支援策は大 変重要であり今後ともその継続を要望いたします。同時に、研究の進展が著しい研究現場を離れず、研究と育児を継続的に両立させる施策も多くの研究者が望むところであり、研究人材の効果的活用の面からも喫緊の課題であります。とりわけ、各大学・研究機関の育児休業に相当する期間、当該研究者・技術者が必要とする研究、教育あるいは育児のいずれかを、部分的に支援する代替要員雇用のための「育児支援資金」を創設が急務であります。

2)病児保育、病後児保育を含む「研究機関内託児施設の設置および整備」もまた、女性研究者支援にかかる必須の項目であり、その立ち上げ、維持、運営のための補助を要望いたします。

3)「男性の育児休業取得のすすめ」の大学・研究機関の規定への記載:男性研究者が育児休業制度を利用し難い雰囲気を改善し、男女にかかわらずワークライフ・バランスの浸透を進められるよう要望いたします。

5.女子中高生の理工系学部進学チャレンジ・キャンペーンの推進に係る要望

女子中高生の理工系学部への進学率を高めるためには、小、中、高校生を対象にした実験、講座を含むチャレンジ・キャンペーンが必要であります。男女共同参画学協会連絡会は、平成18年度より、文部科学省の支援を得て、女子高校生・夏の学校(2泊3日)、女子高校生・春の学校・ジュニア科学塾 2007 in 関西(1泊2日)を開催してまいりました。いずれも、募集枠をはるかに越える応募が全国からあり、このような施策に対する生徒・保護者・高等学校からの期待が如何に高いかが示されました。期待の高さは、平成19年度の文部科学省・理系進路選択支援事業への応募数が、昨年度にもまして高かったことからも容易に伺われます。男女共同参画学協会連絡会は、今後ともこの事業の拠点を全国規模で設置できるよう、予算の増額と採用数の拡大を要望いたします。

 

※参考資料:平成18年度採択10大学における「女性研究者支援モデル育成事業」に関する調査(男女共同参画学協会連絡会調べ:平成19年5月)

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